デスティネーション・ストア | File 022
2023.08.18

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 022 : CONCEPT SHOP WTS(東京都・千駄ヶ谷)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 022は千駄ヶ谷に今年2月に誕生したアーカイブストアの「CONCEPT SHOP WTS」をご紹介。

Text Takaaki Miyake

ウェブメディアから生まれたアーカイブストア

近年さらにその人気が熱を帯びるヴィンテージやアーカイブピースだが、人気のアイテムともなれば数万ドルといった高額での取引きも珍しくない。その流れからここ数年で古着屋やアーカイブショップなどの数は急増し、正直どのお店に行けば良いか迷ってしまうことも度々。そんな中「過去から未来へと繋ぎ、今後もアートピースとして語り継がれる希少なアイテム」を世界中から厳選し、千駄ヶ谷の地に新しくオープンしたのが「CONCEPT SHOP WTS」だ。ここではブランドやジャンル、カテゴリーに囚われず、様々なアイテムを提案することで、ファッションをより深掘りすることをコンセプトに掲げている。

「WTS」自体の立ち上げは約7年前まで遡る。初めはスニーカーのリークやストリートウェアのリリース、デザイナーズブランドのルックなどを発信するインスタグラムアカウントとしてスタートし、現在もその活動は続いている。今回話を聞いた「CONCEPT SHOP WTS」のコー・ファウンダーの一人である​​湯原正太さんは、高校生の頃から古着をきっかけにファッションの魅力に引き込まれた。週末は地元の茨城から原宿や表参道のお店に足蹴く通い、「WTS」の誕生にも繋がる洋服に関する知識や目利きに磨きをかけた。大学を卒業後はLevi’sに入社を決め、5年間で販売を経験したが、昔からの夢であった自身のショップをオープンする夢を実現するために独立を決めた。

「独立してすぐの頃は自分で仕入れた古着などをネットで販売する事業を一人でスタートしました。もう一人の共同運営をしている長谷川周平とは幼馴染で、実は中・高・大も同じ仲なんです。僕が独立した当時、長谷川は、ハワイでメディア関係の仕事をしていていました。彼は、アメリカと日本のメディアが発信する情報が全く異なる事に気が付き、アメリカの情報やトレンドを発信するインスタグラムアカウントとしてWTSをスタートしました。また、現地にいて何がいつ発売するのか全くわからかったことを彼自身が不便に思い、スニーカーやストリートブランドのリークやリリース情報を英語で調べるようになり、それらの情報も配信し始めました。日本語と英語で配信していたのですが、当時そのようなメディアが世界にもあまりなく、配信の早さからアメリカの大手メディアに何回も転載され、フォロワーが一気に増えました。

僕自身もWTSを見たり、長谷川と話している中でアメリカと日本のトレンドや人気商品が違うことに着目し、彼にアメリカでの仕入れをお願いし、自身の事業で販売していました。フォロワーが数万人になったタイミングで長谷川も当時の仕事を辞め、僕の事業と融合するような形でWTSのオンラインショップとウェブマガジンをスタートにいたりました。当時は、NYやLA、ハワイで彼が買い付けたものを僕が国内で販売していましたが、時代や自分たちの趣向の変化で徐々にアーカイブとレアスニーカーなどのラインナップに変化していきました

ボーダーレスなラインナップ

店内は90年代~2000年代初頭の原宿を彷彿とさせながらも、どこかフューチャリスティックで過去と未来がクロスオーバーしたような空間が広がる。一般的にイメージするアーカイブストアとは一味違う雰囲気が漂うが、これも湯原さんのこだわりが体現されている。

「アーカイブショップと言えど古着は古着なので、どうしても古臭く見られがちなんです。それが嫌だったので建物は無機質ながらも、近未来的なお店作りを心がけました。古いモノでも新しさが感じられる、こういった内装の中で取り扱う対比が面白いと感じています。

僕らのお店の魅力の一つはスニーカーも含めて、ノンジャンルなラインナップです。ストリート・デザイナーズ・スニーカーなど一つのジャンルに特化するのが主流な中で、それを一つの空間で紹介しているお店はなかなかない気がしています。毎週のように商品の入れ替えを行っているので、頻繁に足を運んでいただいても楽しんでいただけると思います」

初の実店舗での実験的試み

2023年2月にグランドオープンを迎えた「CONCEPT SHOP WTS」だが、「WTS」として初のフィジカルスペースを構えたのは意外にも東京ではなかったという。

「3年半前ぐらいにとある老舗セレクトショップさんで、ショップインショップの形で営業をしていたんです。それが僕らの昔からやっていたオンラインストアの活動を落とし込んだ初の実店舗としての出店で、2年半ぐらい続けました。

そこはセレクトショップだったので、もちろんデザイナーズブランドのコレクションが店内には並んでいました。奥に行くと僕らのコーナーがあって、同じブランドの最新のシーズンのものとアーカイブピースが同居していたのが面白かったですね」

カフェを抜けた先に広がるショップスペース

ウェブメディアからスタートし、アーカイブストアのオープン、そして現在は紙ベースの雑誌も刊行するなど幅広い活動を行う「WTS」。アーカイブストアと聞くとコアなファン以外は入店を少し躊躇しそうだが、「CONCEPT SHOP WTS」がユニークなのは、カフェが併設され、ファッションへの深い知識がなくとも足を踏み入れやすいフレンドリーな点だ。

「まず大前提として店内には単純に僕らが好きなモノ以外は、たとえ流行っていたとしても置かないようにしています。僕が自ら店頭でお客様とコミュニケーション​​をするので、自分が興味がなかったり、その文脈を通っていたりしないと熱意が伝わらないと思っています。アーカイブなので各アイテムのバックボーンなどをより丁寧に魅力をお伝えしながら、来店された方にゆっくりしていただきたいです。

それに加えて洋服をライフスタイルの一部として提案したいので、カフェの併設を今回のオープン時から決めていました。今後もチャレンジしていきたいことは色々とありますが、まずは何十年先もこのエリアで愛されるお店として根付いていければ嬉しいですね」

DESTINATION STORES | File 22
コンセプトショップ WTS | CONCEPT SHOP WTS
東京都渋谷区神宮前2丁目22-2 FOLD BLD 1F
営業時間 : 12:00〜20:00(水曜日定休)
https://www.instagram.com/conceptshop_wts/