今週のデスティネーション・ストア|File 011
2023.01.13

HONEYEE.COM的個性派シティガイド
File 011 : HYST (東京都・日本橋馬喰町)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を毎週紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 011は毎週土曜日だけオープンする日本橋馬喰町の古物店、「HYST」をご紹介。




Text Yukihisa Takei
Photo Li Bowen


「土曜日だけオープンする古物店」はなぜ成り立つ?

地理的には都心ではあるものの、問屋街やオフィス街として知られ、少し縁遠い存在だった日本橋馬喰町や東日本橋周辺。このエリアに「アツい、住みたい」という声がよく聞かれるようになったのはこの10年ほどだろうか。いわゆるショッピングタウンとは違った、少しチカラの抜けた良質なショップや専門店、飲食店の進出もあり、目的地にする人や散策を楽しむ人も増えている。

そんなエリアに「土曜日だけオープンする人気古物店がある」という噂を聞いて訪ねたのが、今回紹介する「HYST」だ。店舗は間口もさほど広くないビルの1Fと2Fにあるが、奥行きは充分。とはいえ大きな家具や古道具は必然的に面積を要するので、こういったお店は郊外に店を構えるか、販売機会を増やすために毎日のようにオープンするのが普通。

ところが「HYST」はこの場所で“土曜日のみ”という営業スタイルでしっかり成り立っているという。取材に対応いただいたディレクターの石浦明莉さんに、「HYST」の成り立ちなどについて話を聞いた。

「私自身はこの仕事に就く前は大学生でした。雑貨が好きで、学生時代から休みの日にはあちこちの雑貨店を訪ね歩いていたのですが、次第に置いてある商品の傾向が分かるようになってしまって、どんどん一点ものの古物や昔の家具に惹きつけられるようになり、『HYST』に就職しました。共に働くメンバーも、同じように古い物に魅せられた比較的若い世代です」

この店が「土曜日のみ営業」なのには理由がある。それは独自のルートで掘り出してきた中古家具や古物を平日の間にメンテナンスし、それを撮影するスペースとしても活用しているから。通常は別に倉庫や作業場を持つところが多いが、それをひとつの場所で完結させているというわけだ。



同じ若い世代にも古物の魅力を知ってほしい

「HYST」が仕入れているのは「経年40年から70年」のものが中心。古い施設や邸宅などに残された古い時代の家具、食器、照明、置物などの雑貨類を独自の選球眼で仕入れ、それを丁寧にメンテナンスして商品として陳列するところまでを1週間のサイクルでまわしている。

「『HYST』に置いてあるものは、大量生産の少し前、手作業でつくられていたものが中心です。だいたい毎週100アイテム以上を商品としてお店に並べるのですが、約8割はその週末の営業日に売れてしまいます」

その営業時間は11時から17時までのたった6時間。事前にその週末に店頭に並ぶものを撮影し、インスタグラムでの告知を行っているだけで、ほとんどの商品が売り切れてしまうというから驚きだ。

「通販のお問い合わせをいただくことも多いのですが、古物という性質上、実際に手に取って見ていただいた方がいいですし、私たちも古物が好きなので、お客さまと『それ、いいですよね』などと会話やコミュニケーションしながら販売したいという気持ちの方が強いんです」

「HYST」が人気の理由は、その価格にもある。いわゆる一般的な古物家具などに比べてもかなりお手頃だ。これも「自分たちと同じように、若い世代の人にも古物の魅力を知ってもらいたい」というスタッフの気持ちから付けられているプライスだという。

しかも「HYST」のインスタグラムや店頭に並ぶと、バラバラの時代や国のものであっても、良い意味でひとつの世界観の中に入り、それぞれの商品が輝きを取り戻すように見えるから不思議だ。

インテリアを探している人や古物との出会いを求めている人は、ぜひ「HYST」をチェックし、実際に土曜日に足を運んでみてはいかがだろうか。



DESTINATION STORES | File 011

ヒスト |  HYST

東京都中央区日本橋馬喰町1-5-15 アズロバクロ1F / 2F
営業時間 : 11:00〜17:00(土曜日のみオープン)

https://hlywd.co.jp/hyst/
https://www.instagram.com/hystshop/