今週のデスティネーション・ストア|File 010
2023.01.06

HONEYEE.COM的個性派シティガイド
File 010 : STAYFLOWER (東京都・杉並区 代田橋)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を毎週紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 010は京王線代田橋の路地奥の民家で営業するフラワーショップの「STAYFLOWER」。




Text Yukihisa Takei
Photo Li Bowen


人助けの縁が、気がついたら店に

先週紹介した「flotsam books」店主の小林さんに取材している際に、「この近所に若い人がやっている面白い花屋さんがありますよ」と教えてくれたのが、今回のデスティネーション・ストア、「STAYFLOWER」だ。まさにありがたい“「笑っていいとも」方式”。というわけで今週も代田橋のショップを紹介する。

「flotsam books」から歩いて100メートルほどだが、住宅街の通りからも見えない路地奥の民家という、個人宅にしてもマニアックなロケーション。お店に行くというより“ご自宅訪問”に近い感覚でドアをノックして入ると、そこは間違いなく花屋だった。代田橋、どこまでディープなのだ。

ご近所からの紹介ということもありアポなし取材にも快く応じていただいたのは、ここの店主で1994年生まれの中井侃矢さん。大学卒業後にサラリーマンをしていたが、ほどなく退社。少しの期間花屋で働いたのち、自らオンラインで「STAYFLOWER」を立ち上げた。そして中井さんがこの地で実店舗を開業したのには、ちょっとしたストーリーがある。

「僕は元々この辺に住んでいたのですが、ある日、道で倒れている人を助けたんです。その後その人と親交を持つ中で、『そろそろ代田橋を出て、別の街でオンラインを中心に花屋をやって行こうと思います』と伝えたら、『ちょっと待って。代田橋に来たのも何かの縁だから!』と、数日後にはこのボロボロの民家を見つけてきてくれたんです。アトリエにするにはちょうどいいかなと思って借りることにしたのですが、気がついたら店になっていました。こんな場所で店をやるなんて、いまだに自分が血迷っているんじゃないかと思っているんです(笑)」



ミレニアル世代に向けたフラワーショップ

「STAYFLOWER」は“ミレニアム世代に花文化を”をテーマにしたフワラーショップ。現在28歳という中井さんが向けて発信していることもあり、実際にそれまで花を買ったことのない若い世代からも支持されている。発信源の中井さんはさぞかし昔から花が好きだったのかと思いきや、「以前はそこまで花好きでもなかった」というから不思議だ。

「何度か花をもらったりする中で、『花屋も面白そうだな』くらいのテンションだったのですが、飛び込んだらハマりました。子供の頃から手で何かを作ることや、色味のあるものが好きだったので今考えれば繋がっているのですが、花に惹きつけられる何かがあったんでしょうね」

実店舗を開業するに際し、以前から知り合いだった花好きの田村綺女(あやめ)さんに声をかけ、仕入れやアレンジメント、接客は2人で分担。現在はオンラインの担当をしているスタッフと3名で「STAYFLOWER」を運営している。オンライン経由のフラワーの依頼も多いが、最近はこの実店舗へ足を運んでくれる人も増えているという。

「お店に来ていただくのは、近所の方が半分くらいで、あとはオンラインやインスタを見ていただいていて、『来てみたかった』という20代くらいの方が多いですね。1年目は絶望的に暇でしたけど(笑)」

まさに誰かの自宅のような小さな家の中に入ると、色とりどり種類も豊富な花が出迎えてくれる。仕入れの基準は「流行りとか売れそうなものじゃなく、実際に自分たちの目で見て良いと思った花」とシンプルだ。

そして店舗には中井さんの友人が下北沢で営んでいる「sowhat vintage」のフラワーベースも多数取り揃えているので、店内は華やか。入るのに少しだけ勇気が要るかもしれないが、この路地奥の民家には花や花瓶との新しい出会いが待っている。



DESTINATION STORES | File 010

ステイフラワー |  STAYFLOWER

東京都杉並区和泉1-21-6
営業時間 : 11:00〜20:00(木曜定休)

https://stayflower2019.com
https://www.instagram.com/stayflower2019/