2000年代ロックの遺伝子と、現代的な解釈
Text Takeru Yamanaka
2026年7月31日、川西遼平が手掛けるLES SIX(レシス)が東京・四谷のスタジオで2027年春夏コレクションをショー形式で発表した。
ショーから1週間後、その余韻を確かめるように開催された展示会で、川西デザイナーは「ロンドンに留学していた20年前と、現在のムードが重なる」と明かした。コレクションの起点は、音楽シーンの微細な変化を察知した瞬間にあったという。
「あの時代はロックが主流で、今はヒップホップ。けれど今、ヒップホップシーンでは打ち込みの音に飽和感が生まれ、生音を求める若き世代がロックのサウンドをサンプリングし始めていることに気づいたんです」
新たな音の潮流。カルチャーの潮目が変わるその一瞬を鋭く捉えたことこそが、本コレクションを突き動かす原動点となった。
ランウェイを彩ったのは、短丈ジャケットやショートブルゾン、ボーダートップスに細身のスキニーパンツ、そして無造作なデストロイ加工——。
それはまさに、エディ・スリマン時代の「ディオール オム」が世界のメンズモードを席巻した、2000年代の濃密な空気を想起させるプロダクト群だ。
胸元で長く揺れるナロータイやネックレス、腰を落として穿くタイトなボトムス、そして緩く編み上げられたケーブルニットの無造作なレイヤード。当時のアイコニックなスタイリングを踏襲しながらも、過去のノスタルジーに甘んじることはない。現代の空気感を巧みに含ませることで、シルエットもマテリアルも緻密にアップデートされている。
異彩を放つコーティング
コレクションの中でとりわけ強い存在感を放っていたのが、異質な光沢を纏ったコーティングアイテムの数々だ。
「古着感のない、新しい加工を」という川西の意図を受け、素材を担当する若手スタッフとの試行錯誤の末に生み出された。
ショーの影を帯びた照明下では一見レザーのように映っていたそれらは、展示会で手に取るとシリコンのようなコーティングで重厚かつ独特な質感を主張する。さらに、同じデザインでありながら「コーティング有無」双方を揃えることで、コレクション全体に絶妙なシンクロと対比のドラマを生み出してみせた。
「20周年という節目の年に、今まで見てきたものの総集編として挑んだのが前シーズン。そして、ここからまた新しい時代を創り出すべくスタートしたのが今シーズンです」
川西は、コレクションを振り返る。
「やはり自分の経験値に根ざしたものの方が、熱量が宿る。改めて記憶を紐解いたとき、あの時の感覚こそが、今このタイミングなんだと確信しました」
20年前のカルチャーをたぐり寄せ、コレクションに昇華させる。川西遼平というクリエイターの経験値と、時代の変化に感応し続けるしなやかな美学を感じさせるコレクションであった。



































