BETTER STAY「1 Hotel Tokyo」編
2026.05.10

サステナブルとラグジュアリー、相反する要素が織りなす都会のリトリート

Text Takaaki Miyake

仕事の出張でも、プライベートの旅行でも、ワーケーションでも。「どうせ寝るだけ」なんて言わずに、せっかく泊まるならやっぱり気分が上がる方がいい。デザインが良かったり、ご飯が美味しかったり、気の利いたアメニティがあったり。理由はどうあれ、少しでも“より良く”過ごせる場所を自分のために選びたい。そんな“より良い滞在”をテーマにした本企画「BETTER STAY」では、ずっと泊まりたかったあの場所や、今こそ泊まりたいホテルを訪ねていく。

2026年3月、東京・赤坂にオープンした、アメリカ発のサステナブルラグジュアリーホテル「1 Hotel Tokyo」。一見すると相反するサステナブルとラグジュアリーという要素が、空間からレストラン、客室での小さな体験にいたるまで自然に溶け込みながら共存する、日本初上陸となる話題のホテルに向かった。

Courtesy of MORI TRUST

今回の舞台となるのは皇居外苑や東京タワーなど、東京を象徴するランドマークからも近い、「赤坂トラストタワー」の38〜43階。到着するまではオフィスエリアらしい風景も並んでいたが、エレベーターを上がりロビーへ足を踏み入れた瞬間、都心の真ん中にいることを一瞬忘れてしまうほど、静かな空気が流れる空間が出迎えてくれた。

まず印象的なのは、館内全体を包み込むように“生い茂る”、種類もサイズも異なるグリーンの数々。ホテルのコンセプトの一つでもある“自然との距離の近さ”を存分に感じさせる、1500以上の植物がいたるところに並ぶほか、ボタニカルインスタレーションや再生木材、大谷石、砂利など、自然由来の素材も随所に散りばめられている。足を踏み入れた瞬間から、すでにこの空間での宿泊体験はスタートしている。

各客室にも自然界から着想を得た要素が取り入れられ、プリザーブドモスや再生パレットを使用したアート、日本の職人によるインテリアと、窓の外に広がる都会的な景色とのコントラストも印象的。厳選されたグリーンやサステナブルな素材、職人技が静かに調和し、都会にいながらリトリートのような感覚を与えてくれる。

そして忘れてはならないのが、「1 Hotels(ワンホテルズ)」が“サステナブルラグジュアリーホテル”ブランドであるということ。それを、ただ部屋で自然に過ごしているだけで、ふとした瞬間に体感できるのも嬉しい。しかも押し付けられることなく、あくまで寄り添うように。

室内には普段目にするペットボトルの姿はなく、代わりに浄水タップを設置。さらに水を注ぐグラスには、ワインボトルを再利用するなど、その姿勢は徹底している。ほかにもバスルームに置かれるアメニティにも、その精神性は反映されていた。

各アイテムのパッケージには、いわゆる“別の使用用途”が記載されていて、コットンパッドは「コースターや靴磨き」に、シャワーキャップは「カメラや自転車のサドルカバー」など。このユーモアとのバランス感覚からも、「1 Hotels」が単にサステナブルをゲストへ押し付けるのではなく、自然な形で提案しているブランドであることが伝わってくる。

たしかに普段は「アレがないと」とつい思いがちだが、常に代用できる柔軟さやクリエイティビティを刺激してくれるような、小さな気付きも与えてくれた。

そして今回の滞在で特に印象に残ったのが、レストランとバーを含めた“食の体験”だった。

シグネチャーレストラン「NiNi(ニニ)」では、地中海料理をベースにしながら、東京らしい感性で再解釈したメニューを提供。シェフ自慢の5品から構成されるテイスティングメニューはもちろん、南フランス料理のエッセンスと日本の四季折々の食材が調和する一皿一皿を、アラカルトでも楽しめる自由さもありがたい。

器や盛り付けなど視覚的にも楽しめ、ヘルシーでありながらしっかりと満足感もある。また、経産牛を使ったステーキや、抽出後のコーヒーを再利用したアイスクリームなど、ここにも“らしさ”が感じられながら、どこかストイックになりすぎていないのも心地いい。

その後は、ジンを軸にしたバー「Spotted Stone(スポッテッド ストーン)」へ。日本のジンカルチャーから着想を得た空間には、世界各国のボタニカルジンが並び、自分好みにカスタマイズするマティーニ体験も用意されている。

さらにこの日は、「The World’s 50 Best」による世界的ガイド「50 Best Discovery」にも選出された、ポルトガルのカクテルバー「Torto(トルト)」からオーナーバーテンダーが来日し、この日限りの特別なドリンクを提供。こうした日替わりのイベントも、一度だけでなくまた“帰ってきたい”と思わせる魅力のひとつだ。

また滞在中、何度も足を運びたくなったのが、リトリート気分に浸らせてくれるプールエリア。都心の高層階にいるとは思えないほどの静けさが広がり、ただプールサイドに座っているだけでも、不思議と心を開放的に整えてくれる。

24時間利用可能なジム「The Field House」も、単なるホテルの併設施設としてではなく、滞在そのものの質を底上げしてくれる存在として機能していた。

朝から身体を動かし、昨晩とはまた違う表情を見せる「NiNi」へ再び足を運ぶ。和朝食から人気のエッグベネディクト、ビュッフェまで揃うブレックファーストを楽しみながら、ゆっくりとチェックアウトまでの時間を過ごした一泊二日の滞在。

“サステナブル”という言葉だけが先行するのではなく、ラグジュアリーホテルとしての心地良さが共存する「1 Hotel Tokyo」。東京にいながら、普段の暮らしのリズムまで少し変えてくれるような宿泊体験だった。

[INFORMATION]
1 Hotel Tokyo
住所:東京都港区赤坂2-17-22
https://www.1hotels.com/ja/tokyo