サーカス演出で見せる狂気とテーラリングのせめぎ合い
Text Takeru Yamanaka
立川立飛エリアに木下大サーカスの特設会場の赤いテントがぽつんと佇む。都会の密度から切り離されたその孤立感が、川西遼平のLES SIX(レシス)2026年秋冬コレクションに不穏で鮮烈な舞台装置を与えていた。
ショータイトル「MADNESS IS LIKE GRAVITY(狂気は重力のようだ)」は、川西が20年分の記憶と経験を凝縮した命題だ。ピエロやバイクのパフォーマンス、道化の化粧、瞬間を切り取る照明──サーカス特有の緊張感がゲストを包む中、服はその過剰さに静かに応答した。
ファーストルックはテーラリングで始まる。肩線を落としたボックスシルエットに厚手ウールとコーデュロイを用い、下重心の安定感を作る。続くルック群ではペイント、ダメージ、パッチワークなど手仕事の表情が増えるが、それらは単なる荒しではなく「日常服に狂気を差し込むための仕掛け」のように見える。コレクションの軸はオーバーサイズのコートとワイドパンツで、テーラリングとワーク的プロポーションが往復する。黒のキルティング、光沢のあるラバー、長毛のファー、金属的アクセントが断続的に挿入され、モノクロのダイヤ柄(ハーレクイン)、赤いビニール手袋、長めのタッセルといったモチーフが視覚的な符号を整えた。
川西はリリースで「今回のショーは、あの時の少年が夢見た世界と20年間経験したことを一つに詰め込んだ見世物ショーです」と記している。少年期の純粋な夢とプロとしての葛藤を同時に見せるこのショーは、ブランドの強みを余すところなく伝えるものだった。















