
日本人アーティストが表現する DIOR の世界
Courtesy of DIOR
Text Takeru Yamanaka
東京・代官山。八幡通りを左に入るとゴールドに輝くファサードの前に立つ。パリ本店「30 モンテーニュ」へのオマージュを込めたその外観は、確かにメゾンの威厳を宿しながら、どこか静かだ。ここは2026年2月12日(木)にオープンした「Dior Bamboo Pavilion(ディオール バンブー パビリオン)」。世界で三番目となるDIOR(ディオール)のコンセプトストアだ。
視界いっぱいに広がるのは、1,800平米を超える竹林。都市の中心とは思えない静寂だ。ランドスケープを手がけたのは“プラントハンター”西畠清順。希少植物を組み合わせた庭園は、装飾というより唯一無二の体験を提供する仕掛けだ。ガラス越しに差し込む光が竹の葉を透かし、風に揺れる影が床に落ちる。

エントランスを入ると、大きな提灯を設置したビジュアルプレゼンテーションが目に入る。ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が手がける最新のコレクションが円形スペースの中央に展示されており、それを囲むように各カテゴリーのスペースを配置している。

入口右手に、時代の流れに左右されないアイテムばかりを揃えた「タイムレスルーム」。そこから時計回りにスモールレザーグッズ、バッグ、メンズコレクションなどのスペースを配し、それぞれ独特の世界観を繰り広げている。
店内を進むと、アートの存在感が次第に強まっていく。そのアートのほとんどが日本人アーティストによるもので、紙や木など日本由来の素材を使用している。例えば、「タイムレスルーム」の中央スペースに配された什器は、よく見ると見慣れた「カナージュ」モチーフ。しかしそれは布やレザーではない。TAKT PROJECTが手がけた、手吹きガラスのカナージュを樹脂に封入した透明な家具だ。

そしてメンズコレクションのスペースには、深海を思わせるブルーグリーンの家具が目を惹く。東京の魚市場やスーパーマーケットから回収した発泡スチロールを再利用し制作。リサイクルされた素材は虹色に輝く青の造形物へと生まれ変わり、このユニークなブティックのさまざまな空間に配置されている。デイベッドには、樹脂に微細藻類を配合した革新的な新素材が使用されている。
メンズスペースのフィッティングルームで目を奪うのは、光井花によるタペストリー。伝統的な“い草”を用い、刺繍とカットワークで仕上げられた畳の作品は、DIORのコード「トワル ドゥ ジュイ」を思わせる繊細なモチーフを描く。

奥のスペースでは、「カフェ ディオール by アンヌ=ソフィー・ピック」。天井から降り注ぐのは、柴田あゆみによる紙の花々。ノルマンディーの庭園に着想を得たというインスタレーションが、空間を柔らかな光で満たす。
ジョナサン・アンダーソンによるメンズとウィメンズのフルラインナップが揃うこの場所は商業スペースだ。しかし歩き終えた後に残るのは、展覧会を巡った後の余韻に近い。「Dior Bamboo Pavilion」は、ブランドの世界観を“展示する”のではなく、アートとともに“更新する”場所である。
<Information>
ディオール バンブー パビリオン
住所:東京都渋谷区猿楽町8-1
営業時間:11:00〜19:00

