
File 065:THIRD PLACE(愛知県・名古屋)
ついつい通いたくなる、“第3の場所”
HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。今回は少し中心地から距離を置いた、愛知県・名古屋の丸の内エリアに誕生した注目の新スポット「THIRD PLACE」へ足を運んだ。
Text Takaaki Miyake
自宅でも職場でもない、新たな居場所
東京や大阪に次ぐ“第3の都市”とも呼ばれる愛知県・名古屋。ひつまぶしや味噌カツといったご当地グルメはもちろん、根強いファッションカルチャーが息づくこの街では、個性派ショップの存在も欠かせない。
そんな名古屋で名店が集まるエリアと言えば、やはり栄や“名駅”周辺の中心地だろう。しかし、その喧騒を離れたオフィス街の丸の内に、今年4月に扉を開いたのが今回の「THIRD PLACE」だ。
自然光がやさしく差し込み、天高で開放感あふれる空間が広がる空間には、HERILL(ヘリル)やWELCOME-RAIN(ウェルカムレイン)、YOKE(ヨーク)といった実力派ブランドが顔を揃える。一見するとセレクトショップのようだが、店内にはレジ台も棚もなく、あえて“路面店らしさ”を削ぎ落としたこの場所。
「ここは何かを売るためでなく、訪れた人が思い思いに過ごせる“余白”として設計したんです」と教えてくれたのは、ディレクターの西脇洋太さんだ。
西脇さんはこれまで「1LDK annex」で長年バイヤーとして経験を積みながら、自らも店頭に立つことで、一人一人に寄り添ったシームレスなセレクトを続けてきた。その中で気づいたのは、「服だけではなく、過ごし方まで提案するライフスタイル視点の大切さ」だったという。
「この数年で自分のライフスタイルにも大きな変化もあり、ものすごく濃い経験をさせてもらいました。そこで得た感覚を、今の自分の等身大で再構築したのが『THIRD PLACE』なんです」
2025年秋冬シーズンからはラインナップを刷新し、14のうち10が海外ブランドに。アメリカやノルウェー、オランダやフランスなど、世界中から“知る人ぞ知る”なブランドをセレクト。しかもその全てがジェンダーに捉われることなく、「自分たちが本当に使っているもの」をフラットに提案する。
肩に力を入れた“尖り”よりも、長く愛せる普遍性や「ここにしかない」をキーワードに掲げる「THIRD PLACE」。その哲学は、オープニング時にリリースした永遠のスタンダードとも言えるアイテムにも表れている。HERILLとの別注デニムやRUSSELL ATHLETIC(ラッセル アスレティック)とのパックTシャツは、まさに「THIRD PLACE」からの自己紹介のようだ。
情報に溢れ、モノを選ぶこと自体が難しくなった現代において、ただ商品を置くだけではなく、この場所を通じて、その背景や使い方まで丁寧に届けたい。Instagramで多くを語りすぎない、アノニマスに包まれる投稿もその工夫の一つ。
店名の「サードプレイス」は、空間設計を手がけた建築家との対話の中から自然と生まれた言葉だ。「ファースト(家)、セカンド(職場)を抜けたその先にある、第三の場所」。公園のように、自由に、気負わず訪れられる場所──そんな思いが込められたこの空間は、竹で編んだ大きなベンチやゴルフボールを使った什器など、ユニークな要素が緩やかに絡み合いながら構成されている。
「ここで売っているのは服かもしれないけど、服だけじゃないんです。言葉にしすぎると嘘っぽくなるけど、“場所”そのものにこそ価値がある。そういうことがやりたかったんです」
西脇さんがそう語る「THIRD PLACE」には、自宅でも職場でもない、もうひとつの居場所としての新しさがある。
次に名古屋を訪れるときには、「どんな服があるのか」を目的にするのではなく、「あの場所で過ごす時間」を楽しみに訪れてほしい。自宅でも職場でもない、自分にとっての第3の場所が、ここにあるはずだ。
DESTINATION STORES | File 66
サードプレイス | THIRD PLACE
住所:愛知県名古屋市中区丸の内3-16-25 伊藤善ビル1F
営業時間:13:00〜19:00
定休日:Instagramで随時更新
https://www.instagram.com/thirdplace2025/