
木彫アートが問いかける食物への欲、現実とフィクションのギャップ
HONEYEE.COMが、今見ておきたいアート展を毎週金曜日に紹介。この「MUST-SEE ART」を参考に、今週末の“To Doリスト”に加えてみては?
2025年3月、東京・代官山にオープンしたアートギャラリー「AKIINOUE(アキイノウエ)」。ディレクターの井上彰人はNANZUKA(ナンヅカ)で経験を積み、フィジカルスペースを構える前の2023年から、自身のプロジェクトとして数々のキュレーションを手がけてきた人物だ。

「AKIINOUE」ではこれまで谷口真人とダニエル・ヌニェス(Daniel Núñez)による個展を開催しており、2025年6月7日(土)からはフランス人アーティスト・ニコラ・ジュリアン(Nicolas Jullien)の立体作品が並ぶ展示『Food Fight』がスタートしている。
彫刻家や音楽家、映像作家としての顔を持ち、ジャンルレスな表現活動を見せるジュリアンは、近年多くの木彫の立体作品を発表。本展では“食”をめぐる動物の進化と環境への適応の過程を、独自の視点から力強くも静かに投げかけた。
独学で芸術を学んだジュリアンが、ライムウッド(菩提樹)を自ら削って制作したアートワークのタイトルには『Dog looking at beef』や『Snake eating eggs』など、食物に対するプリミティブな欲望の瞬間が明確化されている。
動物の生存本能を捉えた作品からは同時に、現代における家畜化された動物と人間の関係性や社会構造も見え隠れする。今回ジュリアンが投げかけた一つの問いである「どこまでが彼らで、どこからが私たちなのか」。

動物の愛らしさや明るい色彩を纏った立体作品と、その問いとの対比が際立つ本展。そのギャップのなかに立ち止まり、答えを探すことで、新たな視点に出会えるかもしれない。
<Information>
Nicolas Jullien 『Food Fight』
会期:2025年6月7日(土)〜7月5日(土)
会場:AKIINOUE 東京都渋谷区代官山町2−3 THE ROWS 2F
営業時間:11:00〜19:00
定休日:日・月・祝日