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JASON DILL

04 November 2020

Jason Dill

Photo: Mike Piscitelli
Text: Kohei Onuki

唯一無二のスタイルを持つ伝説的スケーターで、スケート・カンパニー“Fucking Awesome(以下: FA)”オーナーのジェイソン・ディル。近年は絵画の制作も手がけるなど、尽きることのない創造力を発揮している。COVID-19のパンデミックをはじめとする多くの問題で混乱する現在のアメリカにおいても、ポジティブでエッジが効いた表現を発信する彼の創作への思いとは。カリフォルニア州パサデナにいるジェイソン・ディルにリモートで話を聞いた。

―― パンデミックの影響で、現在カリフォルニア州パサデナからあまり離れていないそうですが、ここ最近はどのように過ごしていましたか。

パサデナはロサンゼルスのようなシティーではなくて、静かな場所なんだけれど、3月から安全の為にここにとどまっているんだ。厳密にはずっと家に閉じこもっていたわけではないけれど、パサデナから外に出ないようにしていた。自分は散歩や読書が好きなんだけれど、散歩中や家で読書したり、バックヤードの椅子に腰掛けてリスに餌やりをしたり、飛んでいる鳥を眺めたり……ここ半年はそんな生活をしていたね。スケートボードも友達とやるのが楽しいから、最近はあまりしていなかったよ。パンデミックの期間中は、マイク・ピシテッリ(映像作家、写真家。FAの共同設立者)、アティバ・ジェファーソン(スケート・フォトグラファー)等、4人くらいとしか会っていなかったね。あと、この前自転車を手に入れたから最近よく乗り回しているよ。

―― 読書が趣味とお聞きしましたが、普段どのような本を読んでいるんですか。

つい最近はデニス・ルヘインの『運命の日』(2008)を読んだんだけれど、とても面白かった。ジョン・スタインベックやマルコム・グラッドウェルの作品も好きだね。世の中で起きた出来事を予想しない形で作中に織り込んでいるところがいい。自分は高校からドロップアウトしたから、教養がある人間ではないけれど、幸いなことに兄弟クリスの影響で、読書や映画が好きになったんだ。そういえば、日本の警察犯罪を描いた映画『ポチの告白』(2005)も観たけれど、素晴らしかった。これまで日本には40回くらい足を運んでいるけれど、タワーレコードに入り浸って日本映画のDVDをジャケ買いするのが好きなんだよね。

―― 『ポチの告白』は衝撃的な作品でしたね。ところで、2000年代のはじめにFAがスタートしてから現在に至るまで、ブランドにはどのような変化がありましたか。

FAをスタートしてから来年で20年になるんだけれど、人生と同じ様な浮き沈みがありつつも、FAはスタート時からは考えられない状態になっていると思う。例えるなら紙切れに書いた短いストーリーが、いまや大きな物語として分厚い本になったみたいだ。FAの初期と現在とでは、アイテムやライダーに対するリアクションが違うし、デザインも変化している。アパレル、グラフィック、ビデオは毎回異なるものをリリースして、より良いものを残そうと心がけてきたし、アパレルに関しては、これまでで一番良いものを作れていると思うよ。歳月を費やして続けてきた結果だね。

―― クリエーションの面でも充実してそうですね。

自分はいつもめちゃくちゃなんだけれどね(笑)。何か作っても大体はダメだし、たまに上手にいく程度だよ。だから、小さいけれどサポートしてくれるクリエーティブチームがいてくれるのは心強い。FAに関わってくれるスケートチームやクリエーティブチーム、全てのスタッフを大切に思うし、感謝の気持ちを大切にしている。

―― つい先日には新しいコレクションもリリースされましたよね。FAのボードやアパレルのデザインはとても独創的ですが、普段どのようにアイテムのデザインをしているんですか。

例えば自分がメインになって“顔”のデザインが載ったトラックパンツを作ろうとしたら、顔のペインティングを描いたり、顔のサイズを指定してレイアウトしてみた後に、それをみんなで見てみる。モノづくりのプロセスではじっくりと“見る”ことがポイントかな。あと、スケートボード・カンパニーの最も重要なアイデンティティと言えるボード作りは一番難しいね。アパレルやボード、映像も、これまでと同じモノを届けてしまうことは避けたくて、常にデザインを進化させたいと思っているんだ。

―― FAのデザインとは別に、最近は絵も描かれていますけど、絵を始めたのはなぜですか。

自分は物事に執着することがあまり好きじゃなくて、最近も自分の多くの服をサウス・ダコタのラコタ(スー)族に寄付したんだけれど……。ごめん、話が飛んでしまったので元に戻すと、特定の物事に執着しない自分が絵を描くことは大切に感じられて、ここ2年くらい絵を描き続けているんだ。誰でも子供の頃に絵を描いたことがあると思うけれど、それを大きなスケールでしているだけ。自分は絵が上手いと思ったことはなくて、とにかくもっともっと絵を描きたいという衝動だけがあるんだよ。

―― 絵を描くことが楽しいんですね。

そう、すごく楽しい。いま描いているのは、川に赤ん坊が流れている横で2匹の虎が鹿を喰べているという作品なんだけれど、それにはもう8ヶ月費やしている。パンデミックが落ち着いたら、東京で展覧会をやりたいよ。アートに対して心が広い東京でやるのがいいな。ニューヨークだと揚げ足を取りに来る奴が出て来るからさ(笑)。

―― (笑)。是非展覧会を観てみたいです。ちなみに、普段どのように作品を制作しているんですか。

絵を描くときは4枚くらい同時に進めることが多くて、1枚1枚少しずつ作業を重ねていく。そうすると、これ以上は描く部分が無いというポイントが来るから、そうしたら作品が完成かな。とにかく飽きるまで描き続けるんだ。スケートのトリックやアパレルのデザインには明確なゴールがあるけれど、自分にとって絵を描くことは曖昧で自由なものなんだ。それに、ペインティングは達人のようなアーティストが描く精密な作品がある一方で、自分が描くようないい加減な作品でも一つの表現として認めてもらえるから、そこが面白いところなんだよね。

―― 最近はどのような作品を描いているんですか。

最近は世界情勢について考え込んでしまったり、FAのことも多くしていたから、大きなキャンバスにはあまり描けていなかったけれど、小さなキャンバスにはちょこちょこ描いているよ。本当はもっと絵を描きたいし、油絵もやりたいんだ。パンデミックになる前はギリシャ時代の建物なんかの作品に取り組んでいたけれど、基本的には空や木といったランドスケープを描くのが好きだね。建物のような人工物を描く場合はリアリティを問われることもあるけれど、自然を描く場合は完璧過ぎる必要があまり無いからさ。

―― FAのデザインやビジュアルにも自然が登場しますよね。例えばこの写真に写っている場所(インスタグラム上のロケの写真を見せる)はどこですか。

それはユタ州のプロボキャニオンにあるブライダル・ベイル滝。パンデミックの影響からパサデナに長くとどまっていたけれど、“流石にもう我慢出来ない! 大自然の中に飛び込みたい!”と思って、2週間ほど行ってきたんだ。面白くて楽しいビジュアルを撮影したかったし、自然はクールだよ!

―― FAのインスタグラムやユーチューブを観ていても楽しさが伝わります。パンデミックで忘れていた感覚というか、人生の喜びや楽しさが。

ありがとう! みんなにポジティブになってほしいから、そう感じてもらえるのは嬉しいね。ただ、自分自身もパンデミックの恐怖の中で生活しているから、たまに涙を流しているピエロのような気分になることもある(笑)。

―― そうですよね(苦笑)。ちなみに、今月リリースされるアディダスとの新しいコレクションもユニークなデザインで、見ていて楽しいです。先ず2型のシューズ“エクスペリメント1”と“エクスペリメント2”のデザインについて教えてもらえますか。

エクスペリメント1は、自分が若い頃にリリースされていたアディダス・シューズの雰囲気を再現したんだ。アドベンチャー・ラインという当時のコレクションをディグして見つけ出したモデルが、今回リリースされるエクスペリメント1のベースになっている。

―― 今回のシューズはスケートすることも意識して制作したんですか。

スケートのことを特別考えたわけではないけれど、自分はこのシューズでスケートもするし、実際スケートはしやすいよ。あと、エクスペリメント1に対してエクスペリメント2はネオングリーンとオレンジの奇抜なカラーリングなんだけれど、実物はレイドバックした感じのデザインだよ。2つのシューズのキャラクターを全く異なるものにしたかったんだよね。

―― コレクションにはテコンドーの道着といったユニークなアイテムもありますが、特に気に入ってるアイテムはどれですか。

全てのアイテムがお気に入りだけれど、あえて選ぶならブラックのエクスペリメント1かな。あと、アディダス・シューズのトレードマーク“羽付きスリーストライプス”のデザインをアパレルに使用出来たのも良かった。自分はモダンなデザインがあまり好きではなくて、今回のコレクションには、1984年ロサンゼルスオリンピックのセレモニーや、1980年代にジミー・クリフやボブ・マーリーがアディダスを着ていた記憶がインスピレーション・ソースとしてあるんだ。アディダスに『テコンドーの道着を作りたい』と話したら、目を丸くしていたけれど(笑)、もしいまもボブ・マーリーが生きていたら、テコンドーの道着を着ているはずだよ。

―― 道着を着たボブ・マーリー、見てみたかったです(笑)。最後になるのですが、あなたをリスペクトする日本のスケーターやアーティストにメッセージをもらえますか。

チョットマッテね……。そうだな、ガイズ、ガールズ、ゲイズ、レズビアンズ、トランスジェンダーズ……あらゆる人の多様性を受け入れて社会を前進させてほしいということかな。あとは、日本でも大麻を合法化したらいいんじゃない(笑)。いま、アメリカは問題だらけだけれど、世の中が良くなりそうな兆しが少しずつ見えてきた。だから、日本のみんなも社会が良くならないと諦めないでほしい。どうせ考え方の古いジジイ連中は、そのうち死んでいくんだからさ(笑)。

Information

Fucking Awesome & adidasコレクションは日本時間 11月5日(木)にfuckingawesomestore.comで先行発売。11月6日(金)DOVER STREET MARKET GINZAで販売開始。


https://fuckingawesomestore.com
https://www.instagram.com/fuckingawesome/?hl=ja