
まさか、このようなサウンドを4ADがリリースするとは。確かにイギリスぽさはあるが、それはQueen、Elton John、Paul McCartneyのようなチェンバーで捻くれたイギリスのポップスだ。あるいはイギリスのサウンドにあこがれたLeft Bankのようなバロックポップのような世界。一方でHarpers Bazarのようなオールドタイムを追求したハリウッドらしい"バーバンク・サウンド"のようでもあり、時にニューオリンズすら彷彿とさせるドラムまで聴かせ、ドゥーワップやオールディーズのようなブリル・ビルディングまで思い出させる。転調に転調を重ねるメロディーに、浮かんでは消えていく偉大なポップスターの影。ポップスという魔法にかかったことがある人ならば、または作曲家やプロデューサーで辿って行くような人、さらにはヒット曲を年代別で覚えているような人ならば、誰しもが舌を巻くだろう。
期待を裏切らない中世を思わせる格好をしたかと思えば、Ozzy Osbourneのようなロゴを使い、グラムロックや70年代の青春映画から飛び出てきたようなタッキーなスタイリングをするという……新しいのか古いのか……。
いや、新しさやトレンドに固執することだけがYOUTHでは無い。クラシックを徹底的に掘ることもYOUTHの一面と言えるだろう。いや、そんなことはどうでもいい。新しいとか古いとか若いとか年寄りとかイギリスだとかアメリカだとかは全部どうでもいい。ここには世代を超えて、ポップ中毒者を夢中にさせるポップスの魔法がある。ポップスの仕組みを追求し、ポップな着こなしを研究し、青春映画を立て続けに見ながら、自分の聴くべき音楽を、自分が纏うべき服を探そうとする人ならば、必ず気にいるだろう。そういったポップスの魔法がここにはある。今すぐ服屋に行って今までと違うスタイルを手に入れたくなるような、今すぐレコード屋に行って聴いたことのない音を買い漁りたくなるような、そんな1枚だ。こうして僕らは新しいスタイルから古いスタイルを知り、古いスタイルから新しいスタイルを見出していく。転調に転調を重ねるように。
text: Masahiro Kato