漫画の世界を再現した展示空間
──個展「安野モヨコ展 STRIP! PORTFOLIO 1996-2016」では、原画はもちろん、作品ごとに世界観を変えた非常に凝った展示になっています。完成した展示をご覧になった感想は?
「とても楽しかったです。展示について、額縁などいくつかの点は選ばせてもらいましたが、会場自体のレイアウトについてはグラフィックデザイナーの吉田ユニさんと設営スタッフの方にお任せしていました。実際に完成するまで全体像は知らなくて。入り口に大きいコルセットは、キービジュアルにもなっている女性とリンクしていて、私自身も驚かされました」
──特に気に入っている箇所はありますか?
「『さくらん』のコーナーですね。赤い格子の中に原画を展示していて、まるで本当に遊郭の世界に迷い込んだような雰囲気になっています。今回の原画展では空間の演出までこだわるとは聞いていましたが、ここまでやるとは思っていませんでした。作品の世界観によって変えていて大変面白かったです」
──漫画は印刷物ですが、実際に原画をみると、線の強さや色彩の鮮やかさに圧倒されました。
「ありがとうございます。マーカーは、印刷した時に色が沈んでしまう場合があるので、原稿で見ていただくとまた違った印象になると思います。モノクロ原稿の方も、ほぼそのまま展示してありますので修正液のあともガッチリ残っています。そういう意味では“原画展”感はあると思います」


──そもそも、今回の展覧会を開催することになった経緯は?
「最初は、展覧会の最後に飾られている版画を展示できればいいなという話からスタートしたんです。ちょうど、パルコミュージアムが渋谷から池袋に移転するというタイミングもあって、お声がけいただきました。また、今までイラスト集やムックなどは出させていただいたのですが、原画を集めた本はなかったんですね。それで今回は、作品集をしっかりとつくろうと、吉田ユニさんに依頼しました」
──吉田さんとは以前から親交があったのですか?
「『ハッピー・マニア(新装版)』のデザインを担当していただきました。その時も、吉田さんのお仕事を拝見して私からお願いしたのですが、間違いなかったです。表紙になっているメインビジュアルも、吉田さんから“こういう女性の姿がいい”というオーダーをいただき、描きおろしました」
──展覧会に合わせてグッズもたくさん展開されていますよね?
「今回1番こだわったのはハンカチです。スタッフと何度も作り直しをして、なんとか完成しました。基本的には、グッズ関係は、すべてエージェントのコルクに一任しています。細かなアイテムはすべて、コルクのスタッフが企画して、制作してくれています」